2020年5月9日土曜日

長引く在宅の機会に、お片付け哲学について考える


 コロナ禍とそれへの対応の現状にはさまざまな評価があり得ます。しかし、医療従事者、行政、学校や企業などの現場、そして各家庭での市民の努力で、状況が少しずつ改善しつつあるのは事実です。もう一息、気を緩めずに頑張りましょう。

 ところで、コロナ対策のstay home を機に、思いきって不要なものを処分する断捨離に取り組む方も少なくないとか。それを通して日ごろの生活を見つめ直すことにもなるし、いい機会かもしれませんね。
 でも、人それぞれに思い出がつまった物を捨てるのは、決して簡単なことじゃありません。そんなあなたの背中を強く押してくれるのが、今や世界中で人気絶頂のこんまりこと近藤麻理恵さん。「片づけコンサルタント」というお仕事があるんですね。ウィキペディアを見てはじめて知りました。 

 こんまりさんのやり方はこんな具合です(アメリカのテレビ番組を見たことがないので聞きかじりです)。
 あなたは今その服にときめきますか?
 買ったときは明日着ていくのが楽しみだった服も、今はときめかない。すると容赦なく廃棄物の山へ。それがこんまり流ときめきメソッドだとか。 

 私はこのメソッド、というかその背景にある考え方にとても興味があります。過去の栄光でもなければ未来の希望でもなく、現在こそが、今ときめくことこそが大事。
 過ぎてしまった過去の栄光は記憶の中にしかありません。未来は不確かで不透明です。どちらもこの手に握りしめることは出来ない。確かなのは今この瞬間だけ。
 この考え方が説得力を持ち、広い支持を集めているのは、今の時代を考える上でとても重要なことだと思います。過去の栄光? そんないい思いをしたことはないよ。明日は今日より少しだけ生活が向上し、来年はもう少し良くなり、10年後には全く違う世界が待っているだって? 高度成長の時代じゃあるまいし。 

 こんまり流ときめきメソッドは、確実に現在という時間をつかまえています。とてもよくわかる気がします。こんまりさんは、とても鋭い時代意識の持ち主だと思いますよ。 

 ただ、それを認めた上で、私にはどうしても違和感が残るのです。過去に執着しすぎると前に進めない。それはおっしゃる通り。以前のブログで書いたように、福岡という街が発展してきたのは、過去に執着しすぎないという「美質」があったからです。
 しかしあまり過去に無関心でいると、必ずしっぺ返しが来ます。もう一度、似たような事態が生じたとき、経験から何も学んでいなかったことに気付いて愕然とするのです。
 コロナ禍という、ひょっとしたら百年に一度かもしれない歴史的経験をしている私たちは、そのことをよく考えておく必要があります。もはやパンデミックと完全に縁が切れた世の中に戻ることはないと考える専門家も多くいらっしゃいます。 

 私たちは3.11を、熊本震災をどのくらいきちんと覚えているでしょうか。私も人のことは言えませんが、その経験は現在に生かされているでしょうか。
 過去をないがしろにしない。それは、やがて過去になる現在を大切にすることです。こんまりさんの考え方と衝突はしないと思いますが、どうでしょう。

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