2016年3月4日金曜日

都市福岡を極める/究める ~その① 福岡市博物館正面ゲートの謎~

 先日、市の広報課から「FUKUOKA NEXT」の取材を受けました。フクオカネクストは、フクオカという都市の活力を次のステージへ飛躍させるチャレンジとして、福岡市が進めようとしているプロジェクトです。
 あれこれ考えて私が掲げたテーマは、「都市福岡をキワめる」です。近いうちに「FUKUOKA NEXT」のfacebookなどに掲載されると思いますが、とても小さいスペースなので、ここで説明し直しておきましょう。

 まず第一は、「キワめる」とカタカナ書きにした所がミソ。極めると究めるを掛けたつもりです。「極める」とは、日々暮らす場、あるいは訪れる先としての福岡という都市にとことん関わってみよう、街を活かし尽くし、楽しみ尽くしてみようという意味を込めたつもりですが、どうでしょうか?
 そして「極める」ためには、「究める」ことが必要です。地理学者のように眺め、解剖学者のように切り刻み、考古学者のように掘り返す、つまりは都市福岡を知り尽くそうというわけです。

 
 結局のところ、私のNEXTチャレンジは、福岡にかかわる新しい都市論を組み立てたいということかな。そもそも、福岡という活力にあふれた都市を素材に、過去と現在を行ったり来たりしながら新しい都市像を描いてみたいなんて、誰でも一度は考えてみることですよね?

 というわけで、まずは最も身近な足下の問題からはじめましょうか。
 実は私には、自分が勤務する博物館について、かねてから大きな疑問があったのです。ご承知のように、福岡市博物館にはよかトピア通りに面して、立派な正面ゲートがあります(凱旋門みたいなアレです)。でも、この正面ゲートを通って入館されるお客様は、ご存知の通りとても少ないのです。多くのお客様は、駐車場への出入り口となっている東口を利用されます。利用頻度の低い正面ゲート! これって来館者の動線を読み違えた設計ミス? でも百道浜を開発した都市計画のプロがそんな初歩的なミスをするかしら?

 多年にわたるマイチャレンジならぬマイミステリーを解いてくれたのは、私共が昨年12月に開催したシンポジウムでした。講演していただいた福岡市住宅都市局の上瀧部長(百道浜の開発に関わった方です)が、百道浜ははじめて海に向かって開いた開発だったと話されたのがヒントです。

福岡タワーに向かい、南北につらぬく百道浜の軸線
 埋め立て地である百道浜は、東西に走るよかトピア通り(かつての海岸線)を底辺とした台形をなしています。その中央を南北につらぬいて福岡タワーに行き当たる、現在の名称で言えばサザエさん通りが、海に向かった軸線をなしています。
 海に向かって開発された街と考えたとき、この軸線の重要性が明らかになります。百道浜という街の性格を表現しているわけですから、文字通りの軸線ですよね!

 福岡市博物館の南北に長い敷地においても、この軸線が意識されています。博物館の軸線は、百道浜という地域の軸線に伴走している。もう分かりますね? 博物館の入り口は、便利であろうがなかろうが(ご利用者の皆さまごめんなさい!)、よかトピア通りから海に向かう場所になければならなかったのです。これは動線の問題ではなく、理念の問題だったのです。

百道浜の全体像(開発当初の頃)
 私個人としては、ともに歩んだ百道浜という地域の開発理念が、博物館の設計に体現されていると考えるのは悪い気分ではないのですが、勝手な感想でしょうか?
 でも次回は、博物館の軸線が示す理念は、百道浜という地域の成り立ちを越えて、フクオカという都市の歴史そのものを体現しているという、もっと手前勝手かもしれない話に強引に持って行くつもりです。ご異論のある方は手ぐすね引いてお待ち下さい。